初物に手を出すのが粋の証。

2020年 05月13日 - 日常

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」とは、江戸中期の俳人・山口素堂の作です。
目にも鮮やかな「青葉」、美しい鳴き声の「ほととぎす」、食べておいしい「初鰹」と、春から夏にかけ、江戸の人々が最も好んだものを俳句に詠んでいます。
この句が一躍有名となり、江戸っ子の間では、初夏に出回る「初鰹」を食べるのが粋の証となりました。
日本の食文化は、季節を感じながら、季節の味をいただくことを大切にしているので、いち早く季節のものを味わうことは大きな喜びなのです。
旬の走りは珍しさが先行して値段も高めで、もう少し待てば盛りになり、味や値段も安定するのですが、それを待つのは野暮というもので、初物に手を出すのが粋の証だったのです。
とはいうものの、当時「初鰹」は極めて高価で、「まな板に 小判一枚 初鰹」(宝井其角)と謳われるほどでしたが、「初鰹は女房子供を質に置いてでも食え」と言われるほどの人気でした。

初鰹が支持されたもうひとつの理由が、初物の縁起の良さにありました。
初物とは、実りの時期に初めて収穫された農作物や、シーズンを迎え初めて獲れた魚介類などのことです。
初物には他の食べ物にはない生気がみなぎっており、食べれば新たな生命力を得られると考えられ、さまざまな言い伝えも残っています。「初物七十五日」(初物を食べると寿命が75日のびる)
「初物は東を向いて笑いながら食べると福を呼ぶ」
「八十八夜に摘んだお茶(新茶)を飲むと無病息災で長生きできる」(新茶を贈る風習もあります)
初鰹も同様で、「初鰹を食べると長生きできる」とされ、大変珍重されました。
江戸の初鰹は鎌倉あたりの漁場から供給されたため、松尾芭蕉は「鎌倉を生きて出でけむ初鰹」と詠んでいます。

 

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